2015.8.1 |
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戦争をするということ |
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安倍内閣が誕生したいきさつは、ご存知の通り、前民主党野田内閣が、民主党政権誕生時の、次の総選挙までの4年間は決して消費税を増税しないという約束を反故にして、増税を行った反動である。それによって民主党政権は崩壊、自民党の圧勝の中、安倍内閣が誕生したということである。
安倍政権が掲げた経済政策「アベノミクス」については、物価の上昇に対して賃金の上昇がついていかず、実質賃金は低下したままである。また、年金生活者にとっては、物価の上昇分生活が苦しくなっており、国民の心は、その結果を政権が自画自賛するところからほど遠いところにあるのが現実である。この政策によって得をしたのは、一部の大手企業、海外投資家、そして増加した税収を気兼ねなく使える財務省の役人ということになる。
さて、その安倍政権が上程している安保法案であるが、その違憲性、あるいは国際紛争介入の危険性において国民のほとんどが反対している。一方、周辺仮想敵国、すなわち中国、北朝鮮からの軍事的脅威は、あきらかに増しており、この意味において仮に米国が中国や北朝鮮と武力衝突を行った場合、同盟国として米国と共同して戦うことの必要性は、一定の説得力を持つ。これが、安倍政権のいう安保法案の核心であろうと思う。
だが、ここに、いまだ議論されていない問題が存在する。今、それを掲げる。
1.米国ははたして中国、北朝鮮との間に武力行使を行うかどうか。この議論が、まったくなされていない。米国の軍事戦略に関する検討が皆無というのは不思議である。
2.仮に安保法案が可決し、集団的自衛権行使として自衛隊が米軍の後方支援を行った場合、その予算をどのように確保するのかが明確ではない。
3.東南シナ海、日本海有事が発生した場合、はたして現在の自衛隊の戦力、武器装備が十分であるかどうかが明確ではない。
4.敵国の弾道ミサイルに対して有効な対抗手段をもっているいるかどうか、明確ではない。
5.中東地域における米国対テロ軍事活動を後方支援した場合、テロ集団からの日本人旅行者に対する危険性増大の可能性の検討がない。
6.日本国内におけるテロ集団の活動の可能性の検討がない。
7.こうした外国勢力のテロ活動に関する諜報活動(米国CIAや英国MI6に準じた)をいかに行うかの検討がない。
8.将来、有事において自衛隊の戦力が減少した場合、国民は徴兵に応じるかどうか、明確にする必要がある。
武力行使ができる国になること、戦争ができる国になることとは、こういうことである。卑近な例でいえば、米国NSAが同盟各国の政府中枢や大手企業の盗聴を行っているというが、はたして、日本は、ここまでの覚悟があるのか。こうした諜報活動は、戦争遂行において、その道義性はともかくも、必要不可欠なのだろうと思われる。
過去の太平洋戦争において、日本の軍部、政治家、官僚は、あまりに幼稚であり、戦争戦略をほとんど持っていなかったといっても過言ではない。玉砕、特攻という英霊を生み出す戦術は、戦争として大愚である。はたして、こういうことを言える、政治家、軍人が、現在の政府にどれほどいるだろうか。「他国の兵士が血を流しているときに、日本がそれを見ているだけで何もできない、これはいかがなものか」、この言葉以上に存在する武力衝突という現実を見ることがない、あまりに幼稚な戦争観、これが現在の政府の姿である。
戦争、テロリズムは飛び散った人間の血と肉の上に存在する。
戦争は、人間の感情を超えたところに存在する冷徹な現実である。
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