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爽快倶楽部編集部


2014..12.1
この道は
この道は

以前、自分のバンド仲間で67歳のドラマーがいた。彼は、しきりに”後がない”、”残る時間が短い”といっていた。当時、59歳であった自分には、その気持ちが理解できなかった。今、65歳になろうとしている自分に、ようやくその言葉の意味がわかってきたような気がする。若い頃、まるで永遠の未来があるかのようにゆっくりと流れていた時間が、今の自分には、あまりに早く過ぎてくように思える。1週間、1ヶ月、1年があまりに速く過ぎ去っていく、そういう感覚である。
多くの人のように、自分にもささやかな夢があった。もちろん、そのどれひとつも実現していない。人生はやり直しがきかないから、いまさらその実現を願ってもできない相談である。ならば、残り少なくなった時間を楽しくと思うが、自分にとっていったい何が楽しいのか、それもわからない。日々こうして無為なる時間を過ごす、これが今の私である。それをときにくやしく思うが、一方で、人生とは所詮無為なのだと思う自分もある。
最近、たまに昔の思い出にひたることがある。それは小学生だったり、中学生、高校生の自分だったりする。小学生のときに通った通学路も山道の薄暗さや土の匂い、中学生のときに経験した冬の用水池の氷を踏んで落ちたこと、高校生のときの部活動で見た秋の夕空の美しさなど、様々な思い出がこころに浮かび消える。その一瞬は、私にとって至福のときである。
過去は、美しい思い出しか残さない。そういうことなのかもしれない。先は短くなったといえども、この道は続く。できるならば、美しく楽しい思い出をつくりたいと思う。




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