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爽快倶楽部編集部


2013.6.1
原発誘致
福島浪江町住民1万人が「原発事故の慰謝料増額」を原子力損害賠償紛争解決センターに和解の仲介を申し立てた。現在―月10万円を35万円にしたいということである。 福島第一原発事故による放射能汚染により、そこに住めない為、他所で避難生活しているが、当然、ほとんどの住民が避難場所では生計を立てることができない。住むところとはただ単に家があるわけではなく、そこで働き収入を得、生活することを意味する。浪江町住民は住むところはもちろん、生活の糧を同時に奪われたわけである。これは浪江町に限らず、原発周辺の他の居住困難警戒地域でも同様であろう。慰謝料金額を以下にするは、原子力損害賠償紛争解決センターの判断であろうが、いかなる金額であっても避難者が生活に苦しむのでは困る。
さて、日本には福島以外にも北海道から九州まで様々な原発が存在している。これらの原発は、国策として設置された。設置にあたっては、地元がその安全性を国、事業者から説明を受け、納得し了承したものである。それにより、国から設置自治体及び隣接自治体に原発補助金が交付されるようになった。また、原発作業員として多くの地元住民がそれにより職を得た。この意味では、原発は設置地元に大きな恩恵をもたらしてきた。現在停止中の原発がある自治体が、安全確認という条件付ながらも、早期の稼動を求める理由がここにある。また建設誘致を推進する自治体においても、将来における交付金、雇用の確保の目論見によるものだといえよう。地方の過疎化、少子高齢化、税収不足という、地方自治体のもつ問題から考えれば、この是非を簡単にいうわけにはいかない。

今回の福島第一原発事故により、その隣接自治体以外にも放射能汚染による大きな被害をもたらした。この責任は、まずは国にあり、事故を防ぐことができなかった事業者にあろう。福島第一原発の設置自治体、隣接自治体には、彼らが国や事業者から絶対安全であるとわれて建設を受け入れ合意したのであるから、事故以前のいっさいの責任はなかろう。

問題はこれからである。絶対安全といわれてきた原発が実際に未曾有の過酷事故を起こした。もちろん、法としてこれを立証することは難しいかもしれないが、その現実から考えれば原発には絶対安全はないのであり、その状態での稼動に同意することは、刑法でいう「未必の故意」(故意の一種で、結果の発生が不確実であるが、発生するかもしれないと予見し、かつ、発生することを認容(容認)する場合をいう法律用語 −Yahoo!百科事典)が問われよう。したがって、今後の原発稼動、誘致を行う自治体は、事故が発生した場合に被害者となると同時に加害者の一部となる可能性を覚悟する必要があろう。




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