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爽快倶楽部編集部


平成20年9月1日
国家の犯罪
北朝鮮政府による日本人拉致について、それが国家の犯罪であることは誰も異論がなかろう。小泉内閣以降、拉致被害者の奪還について国は何をしてきたかと問えば、幾人かの被害者は返されてきた。が、その後は何の進展も見ない。安部内閣おいては、拉致問題解決なくして国交正常化はないと強硬姿勢を貫いたが、当の北朝鮮政府は日本海に向けミサイルを打ち、核実験を行い、日本政府の姿勢をせせら笑うばかりである。

北朝鮮政府にとって拉致問題とは、彼らの核兵器やミサイルと同じように国家戦略のそのものである。ここには戦争で敵国兵士を死傷させることが犯罪とならないように、拉致という行為は彼らにとって犯罪ではなく、英雄的行為なのだ。北朝鮮をめぐる国際六カ国協議の方向性は、核兵器放棄に重点を置くことに専念し、拉致被害者問題にはあまり大きな関心を寄せていない。中心国である米国は拉致問題について一定の理解を示しているように見えるが、それは単なるポーズにしか過ぎないことは誰の目にも明らかであろう。拉致被害者の家族会が、頼みにならぬ日本政府に対して、むしろ米国に大きな期待を寄せざるを得ないのは、それしかないとはいえ、あまりに空しい。

日本は何をなすべきことは、国民の拉致という国家主権侵害に対して断固たる姿勢を貫くことより他はない。たとえ核問題が解決に向かおうとも拉致被害問題なくして一切の経済援助を拒絶するべきである。六カ国がいかに北朝鮮政府に対して経済制裁を解除しようとも、拉致問題解決のゴールを示し、その解決なしには一切の経済援助を拒絶する旨、北朝鮮政府のみならず六カ国協議において貫くべきである。米国主導の北朝鮮政策は中東問題と合わせて不安定であり、同時にその経済危機において米国に世界安定の指導力はない。世界は変わったのである。

もうひとつ国家の犯罪について言っておきたいことがある。社会保険庁である。消えた年金といわれて1年以上たつが、かって安倍内閣がいったように「最後のお一人までお支払いします」、その言葉がいかにむなしいか、現在の状況が示していよう。特定できぬ年金データがあまりに膨大であると同時に、コンピュータによる処理ではそのデータそのものが信用できないのであるから本質的解決にならぬ。さらに厚生年金では社会保険事務所と企業がグルになって納付保険料の改ざんが行われている。これが民間の保険会社ならば、私文書偽造であり詐欺罪に相当しよう。社会保険では公文書偽造であり、犯罪そのものに他ならない。

今、この社会保険庁がその犯罪が明らかにされぬまま民営化されようとしている。民営化された新会社ではその責は負えぬ。民営化以前にこの問題を解決せねばならぬ責任が国にある。まずは社会保険庁の実態を明らかにする必要がある。その方法として、独立監査法人による徹底した財務監査も一つの方策であろう。社会保険庁歴代の重職にあった官僚の天下り先を含めた退職金の返還も考えねばならぬ。特に納付金改ざんに関与した職員については公文書偽造の刑事告発が必要であろう。さらに、これらの者達を新民間会社で採雇用すのはもってのほかである。これは、まぎれもなく国家の犯罪である。
爽快倶楽部編集長 伊藤秀雄




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