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爽快倶楽部編集部


平成20年6月1日
税の使い道
三国志魏書 東夷伝には次のような記載がある。
國出鐵, 韓·濊·倭皆從取之. 諸市買皆用鐵, 如中國用錢, 又以供給二郡
国、鉄を出す、韓・濊・倭皆従いてこれをとる。諸市買、皆鉄を用いること、中国の銭を用いるが如し、また以って二郡に供給す。
およそ二千年以上も前の話である。かって倭といい、今は日本といっているが、わが国は古代より外国とは決して没交渉ではなかった。鎖国を実施していた江戸時代においてさえ、長崎に出島を築き外国との交易を行っていた。国は、諸外国との交易なしには存在しえないのである。

話は現代となる。昨今の著しい諸物価の高騰の一因に国際原油価格の高騰があるとされる。原油価格を押し上げている要因としては、最近経済成長の著しい中国の原油輸入増大による需給バランスの悪化、米国のサブプライムローン問題による投機ファンドによる原油への投機がある。燃料価格の高騰はすべての物価の高騰の要因となりつつある。また、それに加えて、小麦、とうもろこしなどの国際価格値上がりがわれ等庶民の生活を圧迫しつつあるのも周知の通りである。

エネルギー原料、食料は国民の暮らしの根本である。日本はその両方とも大部分を輸入にたよらざるを得ないのが現実である。が、これだけの原料高騰のをいつまでも消費者物価に転化するは不可能であろう。賃金は上がらない、物価は上がる、ただでさえ格差が問題視されるこの時代、庶民の暮らしはますます苦しいものになろう。

政治は何をなすべきか。今、もっとも必要とされているものは原油価格高騰分に見合うだけの減税であろう。先にガソリン暫定税が1年延長され、また道路特定財源が10年延長されたが、道路を作って、その道路を走る車がなければ無意味であろう。また、その道路の先に人が住んでいなければ意味がなかろう。減税したら、その財源をどこに求めるかという意見もある。が、その財源をひねり出すことこそ本当の政治ではなかろうか。一般会計、特別会計を含めて税の使い道を真剣に組みなおすことこそ、今の国政が求められていることである。

エネルギー原料、食料の国際価格高騰に対しては、投機ファンドからの資金流入を制限すべきとの提案を国際的に行うべきである。金を儲けることは悪いことではない。だが、そのことによって世界全体の人々の暮らしを圧迫してはならない。地球規模の資本主義のあり方も問われるはずである。

また、エネルギー原料、食料は国民の暮らしの根本であるといったが、同時にそれは国家戦略の根本でもある。原油からエネルギー源を風力、太陽光、地熱、波力、国産バイオ・エネルギーなどに転化する、食料においてはできうる限り国産につとめる、価格に競争力がないのであれば競争力を上げるための技術革新を行う、こうした事業を推進する政策が必要となろう。エネルギー原料を買えなくなったらどうするか、食料を買えなくなったらどうするか、これこそ国家が考えるべき問題である。

税は国民のものである。故に国民の生活を豊かで安全にするために使わねばならない。
爽快倶楽部編集長 伊藤秀雄




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